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スタンディングデスクのすすめ、とは簡単にいかないようですが、、

更新日:2024年02月06日
〝運動は薬〟外来

〝運動は薬〟外来のブログの第4回目です。

今回は、運動の話からは少し離れますが、私が日頃、活用しているスタンディングデスク(立った姿勢でのデスクワーク)について書きたいと思います。オフィスでのスタンディングデスクの利用が進んだ背景には、コンピューターの普及による長時間のデスクワークで腰痛、肩こり、などの健康障害が多くなったことがあります。このため1990年代から欧米でスタンディングデスクが導入されました。座ったままの動かない状態(英語ではsedentaryと言います)が長時間になると、それ以外の健康障害として、心血管病、等のリスクになることが報告されると、より盛んに行われるようになっています。

長時間のsedentaryが心血管病(心筋梗塞や狭心症)のリスクになることは古くから指摘されており、英国の2階建てバスの運転手と車掌を比較した研究では、運転手が車掌より2倍多く心血管病になったと報告されています1。その後の研究でもsedentaryが長い事が心血管病、糖尿病、全ての疾患死においてリスクになり2、さらにガン発症のリスクでもあると報告されています3。脳卒中も同様で前回のブログで、“じっとしているのが長い”と脳卒中になりやすいと書きましたが、これは正にsedentaryが長いことを意味しています4

sedentaryを短くすることが重要なのは間違いないのですが、スタンディングデスクを使用すればそれで大丈夫かというと、そう簡単にはいかないようです。立ち仕事の職種と座わり仕事の職種について12年間にわたり心血管病の発症を追跡した研究があります。結果は立ち仕事の職種(機械工、調理師、店員など)の方が座わり仕事の職種(管理職、事務員、秘書など)より2倍程度心臓疾患の発症が多くなっていました5。長時間の立位保持が過度のストレスになり、心血管系に負担をかけたものと考えられます。ここで注意すべきは、この研究で発症が抑えられていた座わり仕事の職種の人達がずっとsedentaryでいたかどうかは分からないということです。sedentaryの合間に断続的に歩くなどの身体活動をしていて、疾患のリスクが低く抑えられていた可能性はあると思います。従って本当に良くないのは、ずっと座り続けている、ずっと立ち続けている、という事かと思います。

ということで、今回のタイトルに関して補足すると、 “スタンディングデスクのすすめ、とは簡単にいかないようですが、”ずっと座り続けているのも良くないので、仕事中は立ったり、座ったり、歩いたりして過ごしましょう、という事になります。私も今はスタンディングデスクのみに固執せず、座る時間も取り、合間に歩いたり、という形で仕事するようにしています。

※画像はイメージです。

文献
1) Lancet. 1953.;265(6796):1111-20.
2) Circulation. 2016;134(13):e262-79.
3) Circulation. 2020;141(13):1113-1115.
4) JAMA Netw Open. 2022;5(6):e2215385
5) Am J Epidemiol. 2018;187(1):27-33.

“運動は薬”外来の詳しい内容はこちら
https://www.miyanomori.or.jp/undou/

<プロフィール>

鐙谷 武雄(あぶみや たけお)
当院副院長、専門は脳神経外科で、中でも脳血管障害(基礎研究に長らく従事してました)
運動習慣は、出来るだけ毎日のストレッチと8㎏ダンベルでの筋トレ、週2回程度のランニング、不定期の10分間HIIT(高強度インターバルトレーニング)、たまのゴルフです。