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便秘解消には食だけでなく運動の力も必要です

更新日:2025年12月25日
〝運動は薬〟外来

25回目のブログです。今回は運動が便秘に対してどのような影響を及ぼすか、ご紹介したいと思います。

便秘の医学的な定義については、日本内科学会では、「3日以上排便がない状態、または毎日排便があっても残便感がある状態」としています。また、便通異常診療のガイドライン2023では、「本来排泄すべき糞便が大腸内に滞ることによる兎糞状便・硬便、排便回数の減少や、糞便を快適に排泄できないことによる過度な怒責、残便感、直腸肛門の閉塞感、排便困難感を認める状態」としています。つまり、排便間隔だけではなく、排便時のスッキリ感の有無も重要な判断基準となっています。

日本における便秘のアンケート調査では、対象者の約3割に便秘の自覚があり、男女別では女性の方が2倍近く多いと言われています。女性では、黄体ホルモンが大腸の動きを抑える働きがあることや、胃下垂などで腸の動きが悪くなることが関連していると考えられています。年齢的には、女性では2040歳代でも多いとされていますが、基本的に男女ともに加齢に伴って便秘の頻度は増加し、65歳以上では、男女ともに67割で便秘を自覚していると言われています。

では、本題の運動の便秘に対する影響について解説したいと思いますが、運動することは概ね便秘改善に効果があると考えられています。いくつかの研究報告をまとめた論文では、運動が統計学的にも有意と言えるほど便秘を改善させ、特に有酸素運動で効果が大きかったとしています1)2024年に報告された新しい論文では、より高いレベルの身体活動は、低いレベルの身体活動と比較して、便秘のリスクを30%程度より減少させることが示されました2)。食事と運動の両者が便秘に与える影響を調べた研究では、果物、全野菜、緑野菜と豆類、全粒穀物、乳製品、たんぱく質源など、より健康的な食物摂取は基本的には便秘を少なくする作用があるのですが、身体活動が高い場合にその効果が大きく、低い場合には効果は明瞭ではなかったとしています3)。つまり、いくら食事に気を付けて体に良いと言われている食品を摂っていても、身体活動が乏しいと便秘解消にはつながらない可能性があるということです。

運動が便秘解消につながるメカニズムですが、次のようなものが考えられています。

  1. 腸の蠕動(ぜんどう)運動の促進:運動では体の動きに伴って腸も一緒に物理的に動かされることにより、腸本来の蠕動運動も活発化され、便を送りだすことにつながります。
  2. 筋力向上による腹圧の増強:運動によって腹筋・骨盤底筋が鍛えられると、排便に必要な腹圧の力が増強され、便をスムーズに押し出す助けとなります。
  3. 腸管の血流改善:運動は全身の血行を良くし、消化管の血流も増加することにより、腸の機能が向上し、蠕動運動も促進されます。
  4. 自律神経の調整:運動は自律神経(体を活発に動かす交感神経と、休めるときに働く副交感神経)のバランスを良好に保つ効果があり、結果的に腸管の動きを整えます。
  5. 腸内環境の改善:運動習慣は腸内細菌叢(マイクロバイオーム)に良い影響を与え、大腸の動きを活発化する善玉菌が増えやすい腸内環境を作ると考えられています。

便秘解消に役立つ食品は、(1)食物繊維、(2)発酵食品、(3)水分、(4)良質な油と言われています。便秘の方はこれらの食品を積極的に摂り、さらに相乗効果を発揮すると考えられる運動を日常生活の中で取り入れて頂ければと思います。

 

参考文献
1) Scand J Gastroenterol. 2019; 54(2): 169-177
2) J Glob Health. 2024; 14: 04197
3) J Neurogastroenterol Motil. 2024; 30(3): 322-331.

“運動は薬”外来の詳しい内容はこちら
https://www.miyanomori.or.jp/undou/

<プロフィール>

鐙谷 武雄(あぶみや たけお)
当院副院長、専門は脳神経外科で、中でも脳血管障害(基礎研究に長らく従事してました)
運動習慣は、出来るだけ毎日のストレッチと8㎏ダンベルでの筋トレ、週2回程度のランニング、不定期の10分間HIIT(高強度インターバルトレーニング)、たまのゴルフです