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快適な睡眠を得るために効果的に運動を利用しましょう

更新日:2026年03月24日
〝運動は薬〟外来

第28目のブログです。今回は運動と睡眠の関係について紹介したいと思います。

運動した日にぐっすり眠れたという経験もあれば、逆に寝つきが悪く熟眠できなかったという経験を持たれた方もいると思います。皆さんのこうした実感が、広く集計された医学的なデータと一致しているか、本ブログでその答え合わせを行い、快適な睡眠を得るために効果的な運動はどのようなものなのかを理解して頂ければと思います。また、後半では不眠症などの睡眠障害に対する運動の効果についても触れていきたいと思います。

以前のブログでも出てきましたが、複数の研究結果をまとめて分析し、信頼できる結論を導き出す“メタアナリシス”という手法を用いて、運動と睡眠の関係が検討されています。まず、一般成人5,000人分のデータ解析では、週4回の頻度で1回30分以下の高強度な運動を組み合わせて9〜10週間続けることが、最も効果的に睡眠の質を改善したと報告されています1)。これが女性に対象を絞ると、有酸素運動が最も効果的で、次いでヨガや太極拳も有効であることが分かりました2)。さらに60歳以上の高齢者の場合は、週2回、1回30分以下の低強度の運動を8週間行うことで最も良い効果が得られていました3)。これらの結果をまとめると、快適な睡眠につなげるには、年齢が若ければ高強度、女性や高齢者では有酸素運動や低強度の運動を、30分以内の短時間で週2〜4回程度行うのが理想的と言えそうです。

実は、私の“個人の感想”もこれらのデータと同様の傾向がありました。普段からスマートウォッチで睡眠スコアを測定していますが、30分程度のランニング後は深い眠りの割合が多くスコアも良いのですが、60分を超えるランニングでは逆にスコアが下がってしまうこともあり、さらに限界に挑戦するような走りをした日に至っては、夜中に足がつって目が覚めるなどのトラブルもあって、運動しない日より悪いスコアになっていました(笑)。以前もご紹介しましたが、やはり「過ぎたるは及ばざるがごとし」という格言は、運動と睡眠の関係にも当てはまるようです。

また、運動は一般の人々だけでなく、睡眠障害の患者さんにも良い効果があることが研究で報告されています。1,300人を超える不眠症患者の解析では、ヨガは睡眠時間を延長させ、太極拳は深い眠りの割合を増やし、ウォーキングやジョギングは日中の機能低下を軽減させることが分かりました4)。その他の睡眠障害については、睡眠時無呼吸症候群で日中の眠気改善に肯定的な影響を与える可能性が示唆されており、今後、ナルコレプシーやむずむず脚症候群など、他の睡眠障害に対する運動効果の検討も期待されています5)。

最後になりますが、高強度の運動は交感神経の働きを強めて覚醒度を高めてしまいます。睡眠の質を高めるためには、就寝直前は避け、少なくとも寝る2〜3時間以上前には運動を終えるように心がけてみてください。

参考文献
1) Front Psychol. 2024; 15: 1466277.
2) Front Psychol. 2025; 16: 1704980.
3) Front Med (Lausanne). 2025; 12: 1664567.
4) BMJ Evid Based Med. 2025: bmjebm-2024-113512.
5) J Thorac Dis. 2023; 15(10): 5863-5872.

“運動は薬”外来の詳しい内容はこちら
https://www.miyanomori.or.jp/undou/

<プロフィール>

鐙谷 武雄(あぶみや たけお)
当院副院長、専門は脳神経外科で、中でも脳血管障害(基礎研究に長らく従事してました)
運動習慣は、出来るだけ毎日のストレッチと8㎏ダンベルでの筋トレ、週2回程度のランニング、不定期の10分間HIIT(高強度インターバルトレーニング)、たまのゴルフです