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貝原益軒の養生訓には運動に関して現代に通じる心得があり驚かされます。

更新日:2026年07月01日
〝運動は薬〟外来

30回目のブログです。前回のブログでは、“オートファジー”を取り上げ、科学の根拠に基づいた現代の養生訓(高脂肪食を避け、腹八分の食事とし、就寝3時間程前には夕食は済ませ、睡眠をしっかりとり、適度に運動すること)をご紹介しました。今回のブログでは養生訓のいわばオリジナルと言える江戸時代の儒学者、貝原益軒が1713年に出版した「養生訓」に立ち戻って、その中に記載されている現代に通じる心得、特に運動に関する記述について紹介します。

まず驚くべきは、益軒自身が江戸時代に、現在の男性の平均寿命である81才をも超えて、85才まで生き長らえた点です。さらに養生訓は彼が82-83才の時に執筆されたと言われています。つまり、死の直前まで頭脳は明晰であり、健康寿命は真の寿命と大きな差がなかったものと推察されます。平均寿命が40歳前後であった江戸時代に、80歳超えて達者にしていた儒学者が書いた心得ですから、皆がそれにあやかろうと広く読まれ、当時の大ベストセラーなっています。

養生訓の全文は中村学園大学の貝原益軒アーカイブで閲覧可能です1)。全体は8巻からなっており、折角ですので、全体像を紹介した後に、運動に関する記載を見ていきたいと思います。

第一巻 総論上:天地父母から頂いたわが身を「孝」の考えに基づき、養生し大切にする。
第二巻 総論下:欲を抑え、血気を巡らせ(体を動かす/温める)、陽(元気)を尊ぶ心を持つ。
第三巻 飲食上:消化の良いものを食べ過ぎることなく摂り、食が気に勝ることがないようにする。
第四巻 飲食下:おかずは一品、酒は一杯で十分、食材は出来るだけ火を通して、薄味にして食する。
第五巻 五官:目・耳・口・歯などを使いすぎず、歯磨き、髪の手入れをし、住まいは清潔にして、病を未然に防ぐ。
第六巻 病を慎む:四季の寒暑に順応し、温湯に浸かり、便通を整え、邪気から身を守る。
第七巻 薬を用ふ:病は微なるときに治すことを心掛け、医薬は吟味し、薬の毒性には注意する。
第八巻 老を養ふ:老後は一日を千金として味わうべき。欲を慎み、日々を楽しむことが長寿の秘訣である。

では、養生訓の中の運動のススメに関する記述を以下に抜粋し、簡単な現代語訳の要点を追記します。

「養生の術は、つとむべき事をよくつとめて、身をうごかし、気をめぐらすをよしとす。つとむべき事をつとめずして、臥す事をこのみ、身をやすめ、おこたりて動かさざるは、甚()養生に害あり。久しく安坐し、身をうごかさざれば、元気めぐらず、食気とどこほりて、病おこる。ことにふす事をこのみ、ねぶり多きをいむ。食後には必(かならず)数百歩歩行して、気をめぐらし、食を消すべし。ねぶりふすべからず。」

要点:なすべき仕事をしっかりこなし、身体を動かして「気」を巡らせることを良しとし、身体を休めてばかりで動かさないでいると病を引き起こす。食後も歩いて気を巡らせ、消化を助けるべきである。

「養生の術は、安閑無事なるを専(もっぱら)とせず。心を静にし、身をうごかすをよしとす。身を安閑にするは、かへつて元気とどこほり、ふさがりて病を生ず。たとへば、流水はくさらず、戸枢(こすう:戸の回転軸)はくちざるが如し。是うごく者は長久なり、うごかざる物はかへつて命みじかし。是を以、四民ともに事をよくつとむべし。安逸なるべからず。是すなわち養生の術なり。」

要点:心は静かに落ち着けつつも、身体は動かすのが良い。身体を甘やかして何もしないでいると、元気が滞り、塞がって病気になる。流れる水は腐らず、頻繁に動く扉の回転軸は朽ちないのである。動いている者ものは長く保たれ、動かない者は寿命が短い。身分に関係なく仕事を務め、安楽な生活に溺れはいけない。

これらの記載を読むと、貝原益軒も運動は薬(養生の基)と考えていたものと思います。300年以上前に益軒のたゆまぬ勉学と体験から紡ぎ出されたた養生訓ですが、この稀代の賢人の提言は、現代に通じる素晴らしい内容と思い、今回紹介させていただきました。

参考文献
1) https://www.nakamura-u.ac.jp/institute/media/library/kaibara/text03.html

“運動は薬”外来の詳しい内容はこちら
https://www.miyanomori.or.jp/undou/

<プロフィール>

鐙谷 武雄(あぶみや たけお)
当院副院長、専門は脳神経外科で、中でも脳血管障害(基礎研究に長らく従事してました)
運動習慣は、出来るだけ毎日のストレッチと8㎏ダンベルでの筋トレ、週2回程度のランニング、不定期の10分間HIIT(高強度インターバルトレーニング)、たまのゴルフです