運動はスキンケアの助けとなるでしょうか?
第26回目のブログです。今回は運動と皮膚の健康・疾患との関係についてご紹介します。
皮膚の健康維持、すなわちスキンケアの一環として運動を取り入れている方は少ないのではないでしょうか。美容のためのスキンケアの基本は洗顔、保湿、紫外線対策とされています。これは直接的な皮膚へのアプローチと言えますが、間接的な内面からのアプローチとしては、食生活、睡眠、運動の生活習慣の調整も非常に重要と考えられています。運動が及ぼす皮膚への影響について近年の医学研究論文を調べてみたところ、共通していたのは、「運動はスキンケアにおいて良い面と悪い面があり、“諸刃の剣”である」という点でした。
良い面としては、運動により皮膚の血行が促進されることが挙げられます。運動の内容にもよりますが、血管は安静時の1.5倍に拡張し、血流量は8倍まで増加するとされています1)。血流が増えることで皮膚に十分の酸素・栄養が送られ、同時に皮膚の温度が上がることで新陳代謝が図られ、皮膚の弾性を保つコラーゲンやエラスチンの産生が高まります。また運動により皮膚の潤いが増すことが知られていますが、これは前述の血流増加と併せて発汗による皮脂膜の形成により水分の蒸発を防ぐ効果もあると考えられています。また、運動は細胞内のエネルギー産生をつかさどるミトコンドリアの生合成やホルモン分泌を促し、それによって皮膚組織の再生に働きます1)。また、以前のブログで触れたことがありますが(第17回目のブログ:ビタミンサプリが運動効果にどんな影響を与える?)、適度な運動は活性酸素を消去する酵素の産生を増加させることが知られており、それが紫外線やその他の刺激により皮膚で産生される活性酸素(シミ、しわ、たるみなどの皮膚の老化の原因と考えられている)の消去に働くと考えられています。また運動が免疫機能を高め、また炎症反応を抑える方向に作用すると考えられています2)。
一方、悪い面としては、一つには過度の運動は消去しきれない活性酸素を産生することに繋がり、それが皮膚の老化につながる可能性が挙げられます。まだ運動の内容によって皮膚にダメージが及ぶ可能性はあり、まず、屋外スポーツは皮膚の老化を進める紫外線を浴びることが避けられません。日焼け止めクリームを露出部位にはしっかり塗っておく必要があります。また、水泳ではプールの水質管理のために使用される塩素成分が皮膚に刺激になるので、シャワーでしっかり洗い流すことが良いでしょう。また、激しい身体接触や転倒の可能性のあるスポーツでは皮膚の損傷が問題になることもあります。
最後に皮膚疾患に対する運動の影響について触れたいと思います。アトピー性皮膚炎などの炎症性の皮膚疾患の場合、やはり運動は良い面、悪い面の二面性があり、有酸素運動はIgE、MCP-1などの炎症関連物質の血中濃度を下げるため、症状を緩和すると考えられていますが、激しい運動では多量の汗や強い摩擦が刺激となって症状を増悪させるため、運動の内容には気をつける必要があります2)。
私も日差しの強い日のランニングやゴルフでは、日焼け止めをしっかり塗って出かけるようにしています。アウトドアスポーツを楽しまれる皆さんも、是非万全の対策をして健康な肌を維持して頂きたいと思います。
参考文献
1) JMIR Dermatol. 2024: 7: e51962.
2) Clin Cosmet Investig Dermatol. 2025; 18: 2189-2200.
“運動は薬”外来の詳しい内容はこちら
https://www.miyanomori.or.jp/undou/
<プロフィール>
鐙谷 武雄(あぶみや たけお)
当院副院長、専門は脳神経外科で、中でも脳血管障害(基礎研究に長らく従事してました)
運動習慣は、出来るだけ毎日のストレッチと8㎏ダンベルでの筋トレ、週2回程度のランニング、不定期の10分間HIIT(高強度インターバルトレーニング)、たまのゴルフです
