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高血圧、糖尿病だけでなく、脂質異常症にも運動は効果を示します

更新日:2024年03月22日
〝運動は薬〟外来

〝運動は薬〟外来のブログの第6回目です。今まで、高血圧、糖尿病と運動の関係を紹介しましたが、今回はこの二つの疾患とともに脳梗塞の三大危険因子とされる脂質異常症について、運動の治療効果を紹介したいと思います。

脂質異常症の改善には食事療法が最も重要ですが、運動にも改善効果があることが知られています。前回、糖尿病の時のブログで紹介した厚生労働省の健康情報サイトe-ヘルスネットでは、有酸素運動を中心とした種目として、ウォーキング(速歩)、水泳、エアロビクスダンス、スロージョギング、サイクリング、等の身体活動を1日の合計30分以上の運動を毎日続ける(少なくとも週3日は実施する)ことを勧めています1)

複数の研究データを組み合わせて検討した結果からは、12週間以上の有酸素運動は中性脂肪を低下させ、また悪玉コレステロールと言われているLDLコレステロールを低下させ、一方、善玉コレステロールと言われているHDLコレステロールを上昇させることが示されています2)。また、20種類程度の運動種目と血中脂質の関連を調べた研究では、HDLコレステロールを上昇させる運動として、ジョギング、水泳、ダンス、サイクリングが効果的であり、中性脂肪を低下させる運動として、ジョギングが効果的であったと報告されています3)。日本人に関するデータとしては、毎日の歩数の量と血中脂質の関係を調べた研究がありますが、2000歩以下~10000歩以上の間で検討すると、歩数が多いほど中性脂肪が低下し、HDLコレステロールが上昇することが報告されています4)。今回、複数の論文を当たった印象として、血中脂質に対する運動の効果として最も明瞭なのはHDLコレステロールの上昇のようで、次いで中性脂肪の低下、LDLコレステロールの低下がみられるようです。HDLコレステロールの低下は心血管病の危険因子されており、低下を上昇させる薬剤はないことより、運動を行うことでHDLコレステロールを上昇させることが出来れば、運動が正に薬となって、心血管病予防につながると考えられます。

最初に触れましたが、脳梗塞の三大危険因子である高血圧、糖尿病、脂質異常症のいずれにも運動が治療効果を示すわけですから、ひいては脳梗塞予防につながります。脳梗塞予防の観点からも運動に励んでいただきたいと思います。

文献
1) https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/exercise/s-05-003.html
2) Br J Sports Med. 2021: bjsports-2021-103999
3) J Int Soc Sports Nutr. 2021; 18(1):35.
4) J Atheroscler Thromb. 2011; 18(10):833-45

“運動は薬”外来の詳しい内容はこちら
https://www.miyanomori.or.jp/undou/

<プロフィール>

鐙谷 武雄(あぶみや たけお)
当院副院長、専門は脳神経外科で、中でも脳血管障害(基礎研究に長らく従事してました)
運動習慣は、出来るだけ毎日のストレッチと8㎏ダンベルでの筋トレ、週2回程度のランニング、不定期の10分間HIIT(高強度インターバルトレーニング)、たまのゴルフです。