脂肪肝の改善/予防ためには食生活の改善と共に運動を行いましょう。
第33回目のブログです。今回は、肝臓疾患の中でも運動が予防・治療効果を示す「脂肪肝」と運動の関係についてご紹介します。
脂肪肝とは、その名の通り肝臓に脂肪が過剰に蓄積した状態です。原因が飲酒によるかどうかによって、アルコール性脂肪肝と非アルコール性脂肪肝に分類されます。近年特に問題となっているのは後者の非アルコール性脂肪肝で、その背景には現代人の糖質過剰摂取があります。
摂取した糖質は小腸でブドウ糖に分解され、血液中に吸収された後、エネルギーとして利用されます。余ったブドウ糖はインスリンの働きによってグリコーゲンとして肝臓や筋肉に蓄えられます。しかし、グリコーゲンの貯蔵量には限界があるため、それを超えたブドウ糖は中性脂肪へと変換されます。こうして合成された中性脂肪は脂肪組織に蓄積されますが、過剰になると肝臓にも蓄積し、脂肪肝を引き起こします。特に注意すべきなのが、加工食品や清涼飲料水に多く含まれる果糖(フルクトース)です。果糖はブドウ糖とは異なる代謝経路をたどるため、中性脂肪に変換されやすく、肝臓に蓄積しやすいことが知られています。そのため、甘味の強い食品や飲料を日常的に摂取していると脂肪肝のリスクが高まります。現在、日本人の3~4人に1人が脂肪肝であるといわれており、肥満者では約80%に脂肪肝が認められます。一方で、見た目は痩せていても脂肪肝を有する人がおり、「隠れ脂肪肝」と呼ばれることもあります。
脂肪肝は単に肝臓に脂肪がたまるだけの病気ではありません。進行すると肝炎、肝硬変、肝がんなどの肝疾患につながる可能性があります。また全身的にはインスリン抵抗性を引き起こし、糖尿病、脂質異常症、動脈硬化性疾患のリスクを高めることが知られています。脂肪肝の予防・治療の基本は、糖質の過剰摂取を是正することです。しかし、これに運動を組み合わせることで、さらに高い改善効果が得られることが分かっています。ここでは、いくつかの医学論文をもとに、そのエビデンスをご紹介します。
2016年にJAMA Internal Medicineに掲載された無作為化比較試験では、脂肪肝を有する220名を対象に運動の効果が検討されました。被験者は①運動なし群、②週150分の速歩群、③週150分のジョギング群の3群に分けられ、約6か月後に肝内脂肪量が評価されました。その結果、運動なし群と比較して、速歩群では肝内脂肪量が4.2%、ジョギング群では5.0%低下していました。この研究から、速歩以上の有酸素運動が脂肪肝改善に有効であることが示されました1)。その後、より高強度の運動である高強度インターバルトレーニング(High-Intensity Interval Training:HIIT)の効果が注目されるようになりました。HIITと中等度強度持続運動(Moderate-Intensity Continuous Training:MICT)を比較したメタアナライシス(複数の研究結果をまとめて分析し、信頼できる結論を導き出す手法)では、両者とも肝脂肪を有意に減少させ、その効果に大きな差は認められませんでした2)。この結果は、脂肪肝の改善において最も重要なのは「継続できる運動を選ぶこと」であることを示しています。一方で、運動時間の確保が難しい方にとっては、短時間で効率よく実施できるHIITは有力な選択肢になると考えられます。さらにHIITでは、介入期間が8週間以下という比較的短期間でも効果が認められていました3)。 以前、第9回目のブログで紹介していますが、当院でのHIITチャレンジでも3か月のHIITの継続で脂肪肝が改善した方がいました。
どうか、ご自身の運動能力と生活スタイルなどを考慮したうえで、継続可能な運動法で脂肪肝の改善/予防に運動を取り入れてみてください。

参考文献
1) JAMA Intern Med. 2016; 176(8): 1074-82.
2) J Clin Endocrinol Metab. 2022; 107(3): 862-881.
3) Eur J Gastroenterol Hepatol. 2025; 37(7): 789-798.
“運動は薬”外来の詳しい内容はこちら
https://www.miyanomori.or.jp/undou/
<プロフィール>
鐙谷 武雄(あぶみや たけお)
当院副院長、専門は脳神経外科で、中でも脳血管障害(基礎研究に長らく従事してました)
運動習慣は、出来るだけ毎日のストレッチと8㎏ダンベルでの筋トレ、週2回程度のランニング、不定期の10分間HIIT(高強度インターバルトレーニング)、たまのゴルフです