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BMIの数値を過信せず内臓脂肪(ポッコリおなか)を減らすように運動をしましょう

更新日:2026年08月06日
〝運動は薬〟外来

第31回目のブログです。今回のブログでは、肥満の評価をBMI(Body Mass Index)の数値に頼るのではなく、ポッコリおなかの元となっている内臓脂肪の量で判断し、過剰な内臓脂肪を減らすにはどのように運動を活用したらよいのかについて、紹介したいと思います。

最近の肥満診療の大きなトピックスとして、2025年に世界の代謝内科の専門家からなる委員会がThe Lancet Diabetes & Endocrinology に「臨床的肥満」の定義と診断基準を発表しとことが挙げられます1)。肥満診断の指標として長らく使用されてきたBMIは「体重(kg)÷ 身長(m)÷ 身長(m)」の式で算出され、身長と体重のみから求められる大まかな指標に過ぎず、実際に健康障害、疾患につながるとされる「臨床的肥満」ついては過大評価(BMIは高いが筋肉量が多く脂肪量は少ない場合)もしくは過少評価(BMIは標準内だが筋肉量が少なく脂肪量が多い場合)をしてしまう可能性があると注意喚起しています。この報告では、「臨床的肥満」を過剰な脂肪組織により臓器の機能障害が生じ、慢性疾患(糖尿病、高血圧、睡眠時無呼吸症候群、脂肪肝、心不全、等)として診断された状態と定義しており、実際の評価には、画像診断または生理学的診断法により、過剰な脂肪組織の存在を確かめる事を推奨しています1)。特にアジア人においては、BMIが標準内にもかかわらず、筋肉量が少なく脂肪量が多いタイプの臨床的肥満が少なくないとされています2)。筋肉量が減ってくる高齢者では特にその傾向が高くなりますので、注意が必要です。

この過剰な脂肪組織のうち、特にポッコリおなかを作っている内臓に沈着する内臓脂肪は炎症性サイトカインを分泌し、血糖値、血圧、血管/血液の性状、などに影響を与えて、前述の慢性疾患の引き金になります3)。内臓脂肪を増やさないためには、第一には食生活管理が大事で、体内で脂肪に置き換えられる糖質や炭水化物を摂り過ぎないことが重要です。一方、すでに蓄積してしまった内臓脂肪を減らすには脂肪を燃焼させる必要があります。これは脂肪を分解してエネルギーとして消費する事ですが、これにはホルモンの作用が深く関わっています。血糖値を下げるホルモンとして知られているインスリンは、実は脂肪代謝において脂肪の合成を促し、分解を抑えるという働きも持っています。それに対して脂肪分解に働くホルモンとしては、アドレナリン、コルチゾール、成長ホルモンが知られています。ですから、脂肪を効果的に燃焼させるためには、まず一日の中でインスリンをできるだけ低く保ち、その上で脂肪分解ホルモンをうまく分泌させることが必要となります。

インスリンを低く保つためには飲食後の血糖値上昇(血糖値スパイク)を抑えることが大事ですが、これは筋肉を動かして筋肉で糖をエネルギーとして消費することで可能です。特に食後に運動を行うことで血糖値スパイクを抑え、インスリンを効果的に下げることができます4)。一方、脂肪分解ホルモンを分泌させるには高強度の運動が良いとされています5)。実際に脂肪燃焼の程度を調べた研究でも、高強度の有酸素運動やHIIT(高強度インターバルトレーニング)の方が、中等度の有酸素運動、筋力トレーニングより効果的と報告されています6)。さら運動のタイミングに関してもいくつかの研究があり、朝食前に有酸素運動をすると一日の脂肪燃焼が良くなるという報告7)や、一日の中では夕食前となる午後の空腹時が最も脂肪燃焼が良いという報告があります8)。

現在までの各研究成果を総合して判断すると、内臓脂肪を減らすためには、①インスリンを低く保つための有酸素運動と②脂肪分解ホルモンを出すための高強度運動をうまく組み合わせるのが最も効果的であると考えられ

ます。①としては、朝食前にウォーキングなどの有酸素運動、また各食後にやはりウォーキング、もしくは家事などの有酸素運動を行い、②としてはHIITなどの高強度運動を夕食前などの空腹時に行うのがおすすめです。

せっかく運動していても、こうした各ホルモンの分泌を意識した取り組みでなければ、内臓脂肪を減らす効果は上がらない可能性があります。また、座ったままで過ごすような安静時間(過去のブログで取り上げたSedentary time)が長いと、やはり脂肪燃焼が妨げられます。どうか日頃からこまめに身体を動かすことを意識して、内臓脂肪をへらす生活習慣を身に着けていきましょう。

参考文献
1) Lancet Diabetes Endocrinol. 2025 Mar;13(3):221-262.
2) Lipids Health Dis. 2025 Feb 18;24(1):57.
3) Front Endocrinol (Lausanne). 2025 Nov 7:16:1681766.
4) Physiol Rep. 2025 Nov;13(22):e70657.
5) J Sports Sci Med. 2024 Sep 1;23(1):559-570.
6) Obes Rev. 2024 Mar;25(3):e13666.
7) EBioMedicine. 2015 Oct 30;2(12):2003-9.
8) Sports Med. 2025 Jan;55(1):49-65.

“運動は薬”外来の詳しい内容はこちら
https://www.miyanomori.or.jp/undou/

<プロフィール>

鐙谷 武雄(あぶみや たけお)
当院副院長、専門は脳神経外科で、中でも脳血管障害(基礎研究に長らく従事してました)
運動習慣は、出来るだけ毎日のストレッチと8㎏ダンベルでの筋トレ、週2回程度のランニング、不定期の10分間HIIT(高強度インターバルトレーニング)、たまのゴルフです